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鈴木泰信  NTN 代表取締役会長
“攻め”が奏功した勢いと速度
材料のプロとして殻を破れ


射るような視線と華やかな笑顔が交互に現れる小柄な紳士。2001年に社長に抜擢され、短期間で業績を好転させた鈴木泰信のオーラは、力強く、温かかった。NTN始まって以来の、技術者叩き上げのトップ。一心不乱に改革に専念してきた経験が、鈴木の考えるリーダー像を確固たるものとした。 今やNTNは、世界20か国以上に拠点を持つ大企業だ。世界各国、軸受のNTNで通る。それが、当たり前と思い込むのは危険という。「若い経営者候補に“第一線の者でも緩む”と伝えたい。常に切磋琢磨するところに自らを追い込まなければならないのだから」。技術者として、現場の設備の状態を監視することに神経を使ってきたお陰で、機械を見れば、全てが分かるという。「楽をしたら、必ずしっぺ返しが来る。現場は生きています」。モノと同時に人も作り、常に部下と共に歩んできた鈴木の経営理念を聞く。 (2008年 春号掲載)

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鈴木泰信氏プロフィール
1959年 名古屋工業大学金属工学科卒。同年NTN入社。
1979年カナダNTN製造社長。1983年 ドイツNTN製 造社長。1991年以降、取締役として経営責任を担いな がら、設計・開発・製造を牽引する技術部門のリーダー を歴任。2001年代表取締役に就任。2007年より現職。

取材:照山みどり(マシナリー・ルブリケーション)
写真:浜田智則
*文中敬称略



技術屋だから見えること

編集部(以下ML) :製品開発や設備投資については、ここ数年快進撃が続き、注目を浴びています。
鈴木会長(以下鈴木) :企業に実力があれば、設備投資は積極的に行うべきです。戦後の産業機械需要や景気動向を振り返ると、ほぼ2〜3年周期で変動しています。“造る”側に資金の余裕ができれば、使う側は景気を見越してブレーキを引くという状況が繰り返されました。また、90年代前半は、市場もドメスティックだった。しかし、今や市場は一極集中からグローバル規模に広がり、景気の変動サイクルも変化しています。 軸受屋はずっと縁の下の力持ちと言われ続けてきた。注目されるようになったのは、つい最近でしょう。NTNも、お客様には“新しい提案をする”という関係へ、少しずつ変化してきました。縁の下時代は、お客様から依頼があって商品を提供する“受身”でした。技術屋だった頃から、この文化を変えたかった。社長になってからは、受身から攻めへと、声を大にして言ってきました。例えば、私がお客様のトップとお会いしたとする。トップから、どうオーラをもらうかが鍵なのです。同時に、NTNとしてこう考えているというオーラを相手に感じてもらうことも必要です。

 社長に就任したのは2001年。急逝した先代の社長から、とりもなおさず引き継いだ。業績は低迷期に入っており、課題は山積していた。しかし、鈴木の姿勢は終始“攻め”だった。就任直後から、二桁の勢いで増収増益と実績を重ね、2007年3月期は前年比24%の増益となった。「経営者の目線によって業績に差が出てくる」。当時から抱くこの信念は、微塵も動いていない。

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ML :技術者として、全ての領域で活躍 されてきました。
鈴木 :NTNはもの造りの会社です。モノを作って、売り、利益が出たらさらに投資してモノを作る。たくさん売るためには技術がわかっていたほうがいいかもしれませんね(笑)。
ML :1979年、42歳でカナダNTN製造の社長に就任されています。
鈴木 :カナダに飛行機が着いたのが土曜日だったんです。現地の社員はまず、「ナイアガラの滝へ行きませんか」と聞いてきた。これから飽きるほど行くっていうのに(笑)。まず、製造現場に立ってみました。製造者としての目線、工場長としての目線、社長としての目線、全て違いますから、土曜日に現場に立つのはいい機会と思ったのです。当時の現場はすさんでいました。機械は汚い、部材は床に散らばっている、トイレは落書きだらけ(笑)。ちょうど労働組合ができたところで、会社は債務超過、作るものはない。でも、「えらいところへ来た」、とは思いませんでした。

 落書きをあえて禁じることはなかった。日本から持ち込んだ梱包材のダンボールをトイレの壁に貼り、毎日貼り換えた。そこに書き込まれた落書きは、従業員から吐き出された会社への本音のメッセージ。新米社長の鈴木が現場の目線を理解するための絶好の資料となったのだ。

ML :2007年から2010年までの中期経営計画として、「創成21」を打ち出していますね。
鈴木 :私は材料屋、表面改質が研究テーマの一つでした。溶射やめっきなど、表面被覆を含めた多様な材料の表面処理が、我々の差別化のポイントになると考 えています。材料表面を創生する、そして「成る」という字を合わせたのが創成という造語です。これまでの下地作りを経て、先行して行ってきた投資の早期回収を目指し、成果、成長など、「成る」に色々願いをこめています。欲張りですからね(笑)。今後NTNを担う若手には、創造性を求めていきます。2007年度は幸い、狙い通りの成果が出た年でした。我々が注力している建設機械、風力発電、鉄道車両、航空機などの産業機械向けの大形軸受は、世界中で需要が逼迫し、生産が追いつかない状況です。今期も、引き続き勢いは維持できると見ています。未だ米国のサブプライムの問題などが尾を引き、予断を許さない状況ですが、私は、この勢いは維持できると見ています。
ML :欧州でのSNR社(SNR Roulements)との協業は?
鈴木 :非常にうまくいっていますが、これからもっとシナジー効果を出さなければなりません。彼らは欧州で大きなシェアを持っていますから、彼らをリスペクトしながらの協業を心がけています。

 4月7日、NTNはSNR社への出資比率を51%まで引き上げ、グループ会社として傘下におさめた。ルノーの他、欧米自動車メーカー向けを中心に、産業機械各メーカー向けにも強力なネットワークを有するメーカーである。

ML :先行して提案する企業になった秘訣は?
鈴木 :一つには“出店”の成果です。提案の内容も、お客様のニーズを超えるものでなければならない。提案というポケットをたくさん備えてプレゼンするのが出店(ユーザー展示会)です。ポケットからいかに上手−−く取り出してプレゼンするか。これまでも30代前半までの若い社員に、この出店を勧め、どんどん外に出し、ユーザー側の技術陣と話をさせてきました。若手の説明に「工夫が見えにくい」など、その場で厳しい評価を受けて冷や汗をかくこともある。そうした経験の積み重ねこそが重要です。
ML :2004年に三重製作所を軸受製造のモデル工場に指定しました。
鈴木 :三重は昨年、新たに第2工場を開設し、産業機械用軸受の生産能力を増強しました。また、現在は第3工場を建設中です。
 三重製作所が竣工したのは、まだ、NTNが低迷から完全に脱していない時期です。お客様のトップ経営者の方々と、景気動向などを議論した際に、三重をモデル工場としようと決めました。当時は景気が悪かったお陰で、土地が半額で買えた。建築資材も設備も、とても安く買えました。設備の設計担当者には、現状の半分の大きさの設備にしてくれと依頼した。半分が好きなんです(笑)。両手を伸ばして機械全部に届き、背伸びして向こう側が見える大きさにしたんです。そして、装置単体は3トンのフォークリフトで運べるもの。ラインは一直線に流し、地球の引力を利用しない、など、色々と原則を作りました。


 一直線の水平ラインのアイデアは、鈴木がある駅で貨物列車の入れ替えを見て思いついたという。製造ラインで作る物が変わっても、装置はフォークリフトで運べる重さで、工程ごとに設備の入れ替えが容易に行える。「貨物列車方式」と名づけているという。軸受の多品種少量生産である。それまでライン上を転がりながら組み立てられた軸受は、こうした鈴木の考えで、新しい生産方式で製造されることになった。

ML :新たに立ち上げられた製造ラインの進捗は?
鈴木 :桑名製作所では、直径2mを超える超大型軸受工場を新たに開設し、風力発電向け軸受の生産体制を整備しました。三重製作所でも、設備増強を実施しました。産業機械用の需要増に対応するためです。前工程である旋削は、石川県の羽咋市に羽咋製作所を設立しました。ここの従業員の熱意と粘りは凄い。これらの拠点をはじめ、新しい工場に配属された若いエネルギーに大いに期待しています。また、同じ能登地区に、宝逹志水製作所を設立しました。ここでは、直径3mの超大型軸受の一貫生産を行います。日本海側と太平洋側で、もの造りを競わせようかと思っています(笑)。
 これには、リスク分散という狙いもあります。地震などの天災に対して、出荷に影響が出ないように対応しています。“減災”対応と呼んでいます。


材料が泣いていないか

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材料を使うのではなく、うまく使わせてもらうために、材料の本質を究めるべきだ。鋼にしても、今までにない特徴のある鋼ができるはずだから。
ML :技術のトップとして、若手にメッセージを。
鈴木 :一つには「特許を出す」ということ。知的所有権を得るためには、まずドキュメントにまとめる必要があります。研究論文も大事ですが、より実利に近い企業としての財産になります。例えば、日本電産と共同開発した流体動圧軸受ユニットは、部品点数がわずか5点で、作ろうと思えばどこでも作ることができる。しかし、我々の特許に必ず抵触するように、緻密に網を張っています。アリ地獄のように(笑)。
 また、「材料が泣いていないか」という問いかけをしています。鋼はがねをはじめ、どんな材料でもいい性状を持っている。それを、設計者がうまく引き出さなければならない。できないのは、勉強していないからです。

ML :NTNグループ全員で環境問題に取り組まれています。製造ラインにも、環境負荷の低減が求められています。
鈴木 :加工用オイルや砥石など、消耗材は極力減らさなければならないでしょう。いかに最小限で最大の力を発揮しるよう設備を工夫するか。モノの取り扱いは、まだ面白い展開があるでしょう。
ML :2008年末には、「新・桑名研究開発センター」を竣工される計画ですが
鈴木 :要素技術の開発拠点です。表面改質を軸に、新しい要素を組み合わせ、様々なチャレンジをしていきます。材料を使うのではなく、うまく使わせてもらうため、材料の本質を究めるべきです。鋼にしても、加熱や冷却によって、今までにない特徴のある性質の鋼ができるはずです。これからNTNは、“当たり前という殻”を破る企業になります。この点において、半歩でも、前に出たいと考えています。



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