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松村幾敏 新日本石油常務取締役執行役員FC・新商品事業本部長兼研究開発本部長
次世代エネルギーの解を求め邁進 潤滑油の高品質化と拡販も加速
環境省は、地球温暖化に関する長期見通しを年初に発表した。日本の平均気温は21世紀末には20世紀末と比べて1.3〜4.7℃上昇するというもの。「何か手を打たないと、日本の大切な四季がなくなってしまい、今とは全く異なる気候の国になってしまう。そのためには、CO2を何としても減らす必要がある。代替エネルギーとして最も有力なのが水素。化石燃料で水素を作り、CO2を地中固定する。これしか手段はない」と言い切る松村氏は、高度経済成長期から現在に至るまで、次世代エネルギーの行方を見通し、共に時代を駆け抜けてきた一人だ。
新エネルギーの創出は、次の100年を制覇することにもつながる。時代の要請を受け、次々と手を打ってきた同社のエネルギー戦略と役割を新日本石油のトップが語った。(2007年 冬号掲載)
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松村幾敏氏プロフィール
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1970年 東京工業大学大学院理工学研究科(修
士)修了。同年日本石油精製入社。1995年開発
部長。2000年 取締役技術開発部長。2001年以
降、新エネルギー本部において、FC事業部長や
開発部長など、次世代新エネルギー技術に関わる
役職を歴任。2004年より現職。
取材:照山みどり(マシナリー・ルブリケーション)
写真:本間晃 |
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時代変化を先取り
編集部(以下ML)
:2007年度の利益目標をお願いします。
松村常務(以下松村)
:当期は、2005年度から始まった第3次連結中期経営計画の最終年度にあたります。経常利益目標は1,900億円です。当社は、石油の在庫を総平均法で評価するので、原油価格の変動が経常利益に与える影響が大きいことから、この在庫益を除いた数字を経常利益目標としています。
ML
:第3次連結中期経営計画中、今年度は最も見えにくい年でしたか?
松村
:2005、2006年とも、目標は大幅に達成しました。2007年1月に54ドルだった原油価格は、1年後には約2倍の100ドルとなりました。原油価格高騰の影響としては、調達コストの上昇分を卸価格に十分転嫁出来ていない問題もありますが、一方で原油を精製する課程で、原油の約5%を自家使用燃料としていますので、当然、原油コストのアップ分が反映されます。これまでも、全社的なコストダウン、販売部門の再編・強化、そして製油所の事故トラブルの撲滅などに取り組んできましたが、大変厳しい収益状況にあります。今年の3月には、2008年度から3年にわたる第4次連結中期経営計画を決定しますが、その大枠には新しいプランも盛り込まれています。一つ目は、精製・販売部門のコストダウン強化。二つ目には、新しく盛り込まれた研究開発部門の強化。すなわち、石油の国内需要減に対応するための新規技術の開発を指します。これは、当社始まって以来の経営計画のテーマとなります。今後、国内では省エネニーズの高まりや原油高、CO2対策など、石油に依存できない環境になってきています。三つ目には、海外事業戦略です。石油元売や鉄鋼メーカーなどは、原料を輸入し、精製加工し、国内への安定供給を最優先にやってきたドメスティック産業です。しかし、世界に目を向ければ石油を含めたエネルギーの総需要は、どんどん増え続けています。電気やガスなどの代替エネルギーのニーズも強くなっています。世界戦略を強く打ち立てていかないと、継続的な成長は見込めません。そして四つ目が、上流投資の強化です。つまり、新規油田や天然ガスなどの掘削です。国内の需要には、漏れなく対応していかなければなりませんので、上流投資は重要です。これら四つを骨子として、詳細を議論し詰めているところです。
ML
:投資額についてはいかがですか?
松村
:第3次中計の総投資額としては、6,860億円の見込みです。スタート当初は5,000億円の計画でしたが、やはり上流投資のニーズが大きくなり、この分野だけで約2,700億円を投資する見込みです。第4次中計においても「選択と集中」を徹底し、引き続き上流投資についても積極的に行っていきます。
ML
:研究開発体制については?
松村
:我々にとっての「技術開発」は、新規ビジネスの創出までを見据えた新しい技術を指します。この第3次中計中に、LPガスや石油化学の子会社を統合してグループ経営という形にしました。これにより、石油精製が中心だった本体に石油化学のカルチャーが入り、研究所の体制も変わりました。第3次中計がスタートする前は、R&Dを担当するのは中央技術研究所、潤滑油研究所の2つでしたが、第3次中計のスタート後、新たに化学研究所、FC(燃料電池)開発研究所、水素・新エネルギー研究所の三部門が加わり、将来技術に対してより強固な体制を築く備えが出来上がりました。石油化学をはじめとした他部門の研究部門を統合することによって多角化を推進したわけです。特に1997年の京都会議(COP3)以降は、サスティナビリティをキーワードとした新エネルギーへの転換、CO2対策をはじめとした環境対応、そして原油高によるエネルギー転換が大きなテーマとなってきました。さらに、BRICsの台頭が、経済効果に凄まじく波及してきました。このような時代変化を先取りしなければなりません。
これしか手段はない
ML
:時代は新エネルギー創出へ急激に向かっています。
松村
:当社のFC開発研究所、水素・新エネルギー研究所の二つは、まさに新時代のエネルギーを創出する拠点です。エネルギー創出の構造変化は、すでに始まっています。2006年5月に公表された「新・国家エネルギー戦略」の中に、自前原油の確保、という課題が盛り込まれています。現在の我国の自主開発原油比率は15%に留まっていますが、2030年までにこれを40%にする。さらに、自動車用燃料の石油依存率は100%ですが、この20%を代替する、という目標も掲げられています。今のところ、水素、電気、バイオ燃料の三つが候補です。これらの政策に沿って活動するのも、我々石油元売会社の役割の一つです。当社は「石油会社」の時代から、「総合エネルギー会社」へ変貌しており、グループ理念にもエネルギーの未来を創造し、人と自然が調和した豊かな社会の実現への貢献を掲げています。社会の変革に合わせ、新たなエネルギーが必要とされれば、そこへ臆せず貢献していく、という想いが我々の活動を支えています。
ML
:新日石では、新エネルギー環境の形として、水素社会という表現をしています。実現までの具体的な道筋やこれまでの事例としては?
松村
:現在、全国で燃料電池車が51台走っています。エネルギー供給用の水素ステーションは、首都圏で9か所、全国で12か所にすぎませんが、私は、絶対に実現させなければならない技術だと考えています。実現しなければ、地球温暖化が進行し、地球環境を守ることができません。何か手を打たないと、日本の大切な四季がなくなってしまい、今とは全く異なる気候の国になってしまいます。そのためには、CO2を何としても減らす必要がある。代替エネルギーとして最も有力なのが水素なのです。もっと言えば、水素、あるいは電気しかありません。しかし、いずれも二次エネルギーなので、原子力、石油、石炭、ガスから作らなければなりません。結局、水素の元となるのは化石燃料なのです。化石燃料から水素や電気エネルギーを創出し、CO2を地中固定する。これしか手段はありません。水素社会の実現は、目先の技術としては難しいです。しかし、人類発展の歴史から見ても、「難しいから諦めた」、という事例はありません。不可能にチャレンジするのがサイエンスの醍醐味です。水素社会も、必ずブレイクスルーを迎えて実現に向かいます。
ML
:そのステップとしては?
松村
:現在、当社の家庭用燃料電池の設置数累計は、今年度末で831台となります。現状の本体価格はLPGタイプで350万円ですが、2015年には50万円以下にする計画で進めています。販売台数としては、10万台を見込んでいます。この家庭用燃料電池の普及で、CO2が30%減らせると見込んでいます。現在、COP3で立案した家庭部門のCO2排出量は、1999年比で最大16%増に留めようとしています。しかし、現実には34%増となり、18%が未達の状況です。これを、目標の2012年までに達成するのは少々厳しい。しかし、家庭用燃料電池が普及すれば、一挙に目標値に近づくくらいのインパクトがあります。我々にとって、最も現実的な解が、家庭用燃料電池といえるでしょう。
ML
:潤滑油がCO2削減に寄与する点としては?
松村
:摩擦係数を減らす、という点だけでも、潤滑油には様々なチャレンジがあります。自動車のエンジンや、トランスミッションなど、しゅう動面の設計負荷を軽減するのが潤滑油です。粘度の最適化や長寿命化などのブレイクスルーによって自動車用途のみで、年間100〜200万トンのCO2削減効果が期待されています。一般産業用の潤滑油についても、10〜20万トンの削減が可能です。潤滑油の省エネに対する貢献は決して小さいものではありません。鍵となるのは、基油の低粘度化+高粘度指数化です。また、第4次中計で大きな柱の一つに挙げている海外戦略については、2006年に米国・アラバマ州、中国・広州において、新たな製造拠点の稼動を開始し、潤滑油事業のグローバル展開を加速させているところです。
ML
:次年度を前に、決めるべきことが山積していますが。
松村
:実は2008年は、当社の120周年にあたります。還暦二つ分ですから、非常にいい数字です(笑)。人の寿命に限りがあっても、企業の寿命は永遠でなければなりません。そのためのシナリオ作りを、今、全力でやっています。
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