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岡村博人  出光興産 執行役員 潤滑油部部長
アジアを軸に世界市場開
新ブランド確立に邁進


2006年10月24日に東京証券取引所一部に上場を果たした出光興産。2011年に創立100周年 を迎える元売の老舗は、「グローバルサプライ ヤー」をスローガンに掲げ、世界戦略を急速に推 し進めている。同社潤滑油事業のリーダー岡村 博人執行役員潤滑油部長が語る「出光の潤滑ビ ジネス最前線」とは?
(2007年 1-2月号掲載)

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岡村博人氏プロフィール
1973年 九州大学卒、出光興産入社
1979年 海外部外航船配船担当
1981年 クウェート事務所勤務。原油買い付け担当
1988年 シンガポール現地法人勤務。現地委託精製、輸入を担当
1993年 出光石油化学出向。原料やナフサの需給担当
1999年 東北支店副支店長
2001年 米国現地法人社長
2005年 現職に就任

世界展開に求められるもの

編集部(以下ML) :世界を視野に入れると、国内のユーザーのみの対応と異なってくる点も多いと思いますが。
岡村部長(以下岡村) :欧米の場合は、材料を提供する側と使う側の仕事の棲み分けが明確ですから、“パートナー”という言い方がふさわしいかもしれませんが、日本の場合は、ユーザーのニーズをきちんと掌握し、“痒いところに手が届く”というスタンスが差別化のポイントになります。もちろん、開発パートナーという形態で仕事は進めますが、要望にきちんと応えられるか否か、マッチングの鍵を握るのはエンドユーザーです。どんなアプリメーカーにしても、開発を要するアイデアをお話いただく時は、高い壁を感じる。しかし、その要望に100%応えるように、必死に頑張るわけです。この信頼関係があるため、逆に欧米企業は、日本市場に入ってくるのが難しいと言えるかもしれません。例えば国内自動車メーカーにしても、1つの製品に求める機能は実に様々ですし、要望レベルも高い。レスポンスの速さも求められます。開発競争に食い込むには、ユーザーの期待に応える姿勢が問われるのです
ML :スピードと、きめ細かさの両立は、世界のユーザーが相手だと厳しい面もあるのでは?
岡村 :我々の顧客の基盤は日本にあります。技術レベルに応えられる力を持っているという点が、最も大事なところです。開発する技術と、品質を維持する技術、両方とも求められます。それを、企業内のシステムと人材によってこなすわけですが、同じ品質を世界で維持するのは、容易ではありません。出光の日本人スタッフが各国で品質監査を実施していますが、日々の品質維持は、各国の工場で採用した地元の人々の力にかかっています。出光では今後、グローバルサプライヤーとしての基盤づくりに、ますます力を入れていきますから、一切のミスが許されません。たとえ、東南アジアの1工場からの供給ミスであれ、全世界で納入が止まる可能性もあるわけです。納期にしても、お約束した日程に猶予はありません。
ML :潤滑油製品の短納期対応について、詳しく教えてください。
岡村 : 2006年からSCM( サプライチェーンマネジメント)の運用を開始し、需要予測ができるようにしました。在庫を調整したり、納期管理を容易にするシステムに仕上げました。現在、このシステムの成果が現れてきています。客先に適切な量の在庫を確保しようとすると、種類が多い場合は特に手作業ではミスが生じます。SCMを活用するとミスが避けられ、不要在庫も減らすことができます。この在庫削減によるメリットは、導入前と比べて10%出ています。
ML :潤滑油は劣化しますから、まして品種が増えると管理が複雑になりますね。
岡村 :すぐに劣化はしませんが、鮮度管理の観点から、製造後1.5年以内にお届けできるようにコントロールしています。在庫については、添加剤などの原材料から製品まで、品種ごとにきめ細かく対応するようにしています。清浄分散剤、粘度指数向上剤、摩耗防止剤といったあらゆる添加剤を要望によって使い分けますので、このSCMによって在庫管理をさらに合理化していきます。


環境対応製品の開発進む

ML :2005年に発表された「第2次連結中期経営計画(2005〜2008年度)」において、潤滑油は、電子材料や機能化学品と並んだ高付加価値事業と位置づけられています(表1)。この点から見た潤滑油事業のご進捗をお教えください。
岡村 :昨年10月に上場を果たしました が、その前に中期経営計画がまとまり、各事業部単位で活動してきました。しかし、もともと、出光にとって潤滑油が高付加価値製品であることに変わりはありません。他社製品と差別化できる付加価値をつけて販売するのが前提です。出光の歴史は、潤滑油販売から始まっています。1953年、業界に先駆けて高級基油を北米より輸入し、独自に各種添加剤を配合し、販売を開始しました。「アポロイル」、「ダフニー」は、当時から現在に至るまで、高級潤滑油の代名詞となり、1968年には潤滑油の専門・実用研究所として「営業研究所」を設立し、ユーザーの多様なニーズに対応しています。高付加価値製品提供の歴史は50年以上にわたっています。歴史も、重みもあるわけです。
ML :売上を牽引するという点ではいかがですか?
岡村 :高付加価値製品のラインナップを増やしていくということになりますね。様々な分野で、“環境対応”の製品が求められています。我々が次世代製品として、最も注力しているものの1つです。例えば、開発の歴史が長い非塩素系切削油「ダフニーマーグプラス」シリーズは、廃油処分の際に発生するダイオキシンを生成しませんし、処理費用のコストを低減します。また、風力発電システム用の長寿命ギヤ油や、生分解性(水溶性)の油圧作動油、電子機器用の焼結含油軸受含浸油などのほか、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質PM(Particulate Matter)の規制法規に則した粒子を抑えるディーゼルエンジンオイルなどもラインナップしています。また、自動車のトロイダルCVT用に開発した技術を車椅子に応用したメーカーが、我々のトラクションオイルを活用しています。非常に静かで、変則ショックのないものとして、ニーズにぴったり合っているようです。
ML :トロイダルCVT用のオイルは間違いなく出光の戦略商品ですが、ビジネスとしてはいかがですか?
岡村 :このオイルは高級品で、まだ一部の高級自動車に供給されているに留まり、我々としては、もっとこの技術を広めたいですね。欧州の自動車メーカーもテストを始めようとしている段階です。しかし、この数年で急速に需要が高まり、市場も広がる可能性を秘めている製品です。何より、燃費が削減できるというのが強みですし、時代に適合しています。多段式のオートマチックトランスミッションは、多段になればなるほど変速ショックが少なくなりますが、トロイダルCVTは無段ですから究極の姿です。さらに、近年は燃費規制も非常に厳しくなっています。国が策定した「2010年燃費基準」*に適合した製品としても、トロイダルCVT用オイルの将来性は高いと見ています。自動車の設計についても、某社はトロイダルCVTによって解を出し、某社はハイブリッドと、戦略が分かれています。また、省エネ・省燃費をクリアするという観点では、実に様々な“手段”があります。
表1 事業の種類別セグメントと戦略区分
岡村 :ガソリンエンジンオイルそのものも、低燃費を達成できる要素があります。
ML :具体的なオイルの特性としては?
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岡村 :低粘度化です。出光ゼプロ「エコメダリスト0W‐20」を用いて、2005年に4,000km8日間の燃費比較テストを列島縦断という形で行ったのですが、8.4%の燃費向上率を達成しました。0ゼロWですから、超低粘度で、始動が非常にスムーズ、さらに高温状態でも粘度が変わらないため、結果的に燃費の向上にも効くというものです。結果を見て、私自身も驚きました。SAEの0Wというレベルにするには、添加剤のみの工夫では不可能です。このオイルの基油は、高度に精製されたベースオイルで製造しています。この基油がないと、ここまで低粘度のオイルはできません。
ML :今後の商品差別化の条件の1つに、低粘度対応があるわけですね。
岡村 :2004年頃からその傾向が強くなってきました。それ以降発売された新車については、約80%が低粘度オイルを推奨していますから、対応は必須です。


基盤造りの骨格はできた

ML :潤滑油の販売見込みについて教えてください。
岡村 :2006年度は、国内販売量が62万kl(前年比1.4%増)、海外販売量が35万kl(同4.5%増)、総販売量で97万kl(同2.5%増)と見ています。2007年度は、100万kl達成を目指します。創業100周年にあたる2011年には、120万kl達成を目標としています。現在は、第2次中期経営計画の只中ですが、2008年以降も睨んで展開しています。販売シェアですが、2005年度国内では、23.7%を達成して2位でした。これは、国内シェアとしては、創業以来最高の数字です。ワールドワイドでは2.2%で、現在10位*ですが、2011年には8位へ、2015年には7位へと、控えめにランクアップを狙っています(笑)。
*出典:Petrofinance 2004
岡村 :海外のビジネスが伸びているというのが、出光の特徴でもあります。現在、海外製造拠点は26か所、販売拠点は、2006年9月にインドに設立した100%子会社の「Idemitsu Lube India」を含めて30か所となりました。最近の拡大事例では、中国の天津、タイ、インドネシアに工場を新設・増設しています。これらの製造拠点や供給網を拡充することで、早期に100万kl販売量を実現していきます。出光のみのネットワークだけでなく、ローカルネットワークと提携することで、世界展開のスピードも上げていきます。
ML :海外拠点の展開スピードはますます加速していくのでしょうか?
岡村 :現時点では「骨格はでき上がった」というところですが、すでに需要増対応が厳しくなっている地域もありますから、国ごとの対応はまだ整備する必要があります。2004年の12月に操業した中国天津工場は、年産で約2万klになり、今後の需要伸長を考慮すると拡張が必要になっています。さらに中国一番の需要地は広州ですから、新工場を広州に作るという選択肢もあります。需要増に対して製造力をいかに整備していくかが大きな課題となっています。
図1 国内販売推移
図1 国内販売推移
ML :現在国内で生産している高付加価値製品が、将来、中国拠点に製造集約される可能性は?
岡村 :現在のところ考えていません。出光の海外拠点は、基本的に現地需要への対応です。インドの拠点も、インドの需要に対応して作り上げたものですから。いずれにせよ、今後販売量拡大の鍵を握るのはアジアの需要です。ネットワークの密度はさらに上げていきます。ロシアも視野に入れ、活動準備を始めています。
ML :今後の抱負をお教えください。
岡村 :我々の強みは、何といっても開発力にあります。No.1商品をいち早くリリースし、シェアを取っていくこと、これが中期の最大の目標です。ポイントは、やはり環境対応、省エネ対応となるでしょう。「これぞ出光」という新ブランドを、近い将来必ず出しますので、期待してください。



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